カブトムシおじさん

ちょっと前になるけれどBくんをカブトムシとりに連れて行ったときのこと。

朝のスケッチにいくとまだお食事中のカブトムシが残っていることがある。
カブトムシ博士からもどの辺にいるかきいておいた。
それでカブトムシのいる木がわかってるはずだったのだけれど
やっぱり真っ暗な夜に森に行ったことがないので
カブトムシの木がどこにあるかわからなくなってしまった。
Bくんはわくわくして走り出したいのを懸命にこらえてるようす。
まずい、1匹も捕れなかったらどうしよう…。

真っ暗な森はちょっぴりこわい。
しかも森のはずれにある真っ暗なベンチに男の人っぽいシルエットが。
こわかったけれどあえて元気に「こんばんは!」と声をかけてみた。

「とれたかい?」

は?
こちらがカブトムシとりにきてることがわかってるらしい。
ひとりぽつんと座っていたおじさんは近所の方で毎日お散歩がてら
ついカブトムシをとってしまうのだという。

「あげようか。」
とお持ちの虫かごからぞろぞろと10匹ほど。。。

それから「まだ早いんだよね。9時をすぎないと。」といいながらも
カブトムシポイントをまわってくれて
さらに数匹つかまえてくれた。
Bくん、おおよろこび!

ああよかった、実はゴキブリが苦手なのでカブトムシも
そんなに大好きではない。

おじさんと別れてから
Bくんにかくれてだいぶ逃がしたけれど
それでもまだ餌が大変なくらいは残っている。

あの謎のおじさんは毎晩ああしてカブトムシを捕っているのだろうか。
きっと少年時代からずっと虫取りが好きで
そのまま大人になったんだろう。
カブトムシにはちょっと気の毒だけれど。


こちらは今回2枚目の蓮。

花は違えど、さくらの花びらの絵と根底に流れるテーマはおなじ。
蓮はより生と死をおもわせる。

花が散る瞬間ってどきどきするものだ。

美しかったかたちがこわれて惜しむきもちがありながら
その散りゆく姿も美しいとおもってしまう。
なんだか切なくも神々しくも感じられ
スケッチの手がしばしとまる。

日本画 M12号 「瞬」 2011年


去年、あまりに暑かった夏が過ぎて
しばらく気が抜けてスケッチをさぼっていた。
たしか去年は秋が来たのが急で
あっという間に寒くなってしまったと記憶している。
気がついたらスケッチに適した気候はあっというまに過ぎ去っていた。
このガマズミをスケッチしたのもだいぶ寒くなってからだったのだけれど
それまでサボったぶんを取り返すがごとく
毎朝通いつめてスケッチした。

秋の朝霧はとてもすてきでそのなかにぽっと浮かぶ赤は
どきどきするほど美しく
霧を集めて露を宿した姿もほんとうに素敵だった。

こちらも9月の個展にもって行く予定。

日本画 M12号 「朝霧の香」 2011年

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