後藤純男回顧展


寒くて風がつよい日が続く。
今日は風はやむって言ってたのに!
風邪もインフルエンザもはやっているね。
みなさんお元気?

第2金曜日、毎月自転車で守谷のジョイフル本田まで通勤するのだけれど
先月の帰り道、突然風が強くなり劇的な雲が現れた。
北国では大雪との予報が出ていた日だ。
雪の温度をそのまま持ってきたような
身も凍る冷たい風がびゅうびゅう吹く。
とても寒かったけれどあまりに美しい。

利根川の土手から柏の葉キャンパス方面を臨んで。

あっという間に美しい雲は吹き飛ばされ
風もすぐにやんでしまい
冷たい空気だけが残された。

今日は前々から気になっていて
チケットの前売りもずいぶん前から買ってあった後藤純男回顧展を観にいった。
先生が亡くなったのは去年の10月。
もう何年もご無沙汰したままだった。
妹が弟子入りしてからしばらく家族ぐるみでお世話になった。
・・・とはいえ・・・
いつも呼び出しは突然で
画商さんと話すのがイヤになると妹を、
たまたまいたら私や母まで呼び出し
飲みきれない量のお酒と食べきれない量の食事をずらり並べるのだった。
最初のうちはよろこんでお邪魔していたけれど
続くとどうもつらくなってくる。
どんなにおいしいものでもこんな大量では消費しきれず
もったいないと思いながら残してしまう。
突然呼び出されるのも困ってしまう。
それでも画商さんとのお話で険しくなった先生の表情が
私たちがいくことで和むのがわかった。

中国への取材に連れて行っていただいたことがある。
毎晩毎晩遅くまで飲んでいたのに
誰よりも早く起きてスケッチなさっていた。
負けじと遅寝早起きするので私も妹もふらふらである。

重慶から武漢まで数日かけて大きな船で長江を下った。
私の大好きな三国志で有名な赤壁が見られる。
曹操が大敗を喫したあの場所である。
でもほんとにふらふらでよく覚えていない。
ゆったりと動いているようで船の動きは意外と早く
全然描けないうちに通り過ぎてしまった
にごった川面にドザエモンが浮いていた。
引き上げることもなく、
よくあることと一緒に行った方が言うのでびっくりしたのを覚えている。
その船でも毎晩宴会。
朝日を描くのだ、と夜明け前から起きだす先生についていき
スケッチブックを構える。
動く船の上で私がみみずののたくったような線を描いているうちに
先生はみるみる見事なスケッチを仕上げてしまう。

上海では中国の美人の画学生に
「メイクーニャン、ウーアイニー」(美しいお嬢さん、愛しています)
を連発してドン引きされた上
夕食(もちろんわたしたちもみんな一緒の)に誘って
あらぬ誤解をされたりしていた。

わたしもまだ20代だったので
女の子好きなおっさん、とちょっと引いちゃってたけれど
いま思うと確かに若い女性が好きではあったが
いやらしいことは全くせず
いろいろと教えて応援してくださり
遊ぶときは遊ぶ
子供のように純粋な方だったとおもう。

そのうち妹が芸大に入りなおしたのをきっかけに
少しずつ距離があいて
私はまったくお会いすることがなくなった。

こうして作品を拝見すると
絵に対する怖いまでの真剣さ、厳しさが伝わってくる。
絵の前に立つと北海道の雪原に、中国の峻険な山々のなかに
砂漠の夕焼けに、立ち会っているような錯覚に陥る。
しんとした冷たい空気を、砂埃舞う嵐の予感を
煌々とした月の光を、あの狭い空間でたしかに感じた。
これがほんとうの絵の力なのだと思った。
桜が咲き誇るあの山の風景をあそこまで表現できるのか。
遠くの桜、近くの桜、間に見える針葉樹、
すべて細かく描かれていてそれでいて全体の構成もゆるぎない。
絵の間に先生がスケッチしている姿を写した写真があり
思いがけず涙が出てきてしまった。

後藤純男 回顧展
流山市生涯学習センター1Fギャラリーにて2/21(火)まで

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。